古くから、ハバナに次ぐ葉巻産地としても知られるのがフィリピンのマニラ 。
ここマニラで製造される葉巻は、中南米産とは異なりかなりマイルドでほのかな甘さを特徴としていることから常喫する葉巻としてディリーシガーの選択肢になることも多いという。
歴史的に見てもまた、日本から地理的にも近いため、一九世紀ころから入手し易い葉巻として葉巻好きの間ではよく知られていたという。
古くはマニラ産ブランドの葉巻は、チャーチルやマッカーサー等、歴史上の著名人が常喫していたということでもよく知られている。
フィラーとバインダーにフィリピン産のタバコ葉を用い、ラッパーにはジャワ産のスマトラ葉を用いるのが特徴で日常的に楽しめる葉巻を全世界に提供している。
今回、取材の合間にラグナ州サンペドロにある一九九三年創業のタバケリア・デ・フィリピナス(Taba queria de Filipinas)社(以下 タバケリア社)を訪ねてみた。
ガブリエル リポール ジュニア氏(Gabriel Ripoll,Jr.)により設立されたタバケリア社は、彼自身の四〇年以上に渡るフィリピンでのシガー産業での経験の中から起業したという。
創業時は、マニラ旧市街に戦前から残っていたガレージを借りて五人のトルセドールから身を起こしたという氏は、マニラから一時間ほどの郊外のサンペドロ工場のエントランスで出迎えてくれた。
今日では、ここラグナ州サンペドロ(San Pedro, Laguna)に新しい工場を建て、200人を超える従業員を雇用しているという。部屋に案内されると氏は、まず日本へも輸出しているというアントニオ・ヒメネスのロブストスを奨めてくれ歓待を受けた。
フィリピンでは、成長著しい企業の多くがファミリービジネスと聞くが、こちらもガブリエル氏のご子息であるティルソ(Tirso)とローマン(Roman)もプロダクトマネージャーとセールスマネージャーとして社に参画しているという。
ガブリエル氏、自ら工場の案内役をかってでてくれ明るい工場内を見学させていただいた。
新しく二百人を雇用するサン・ペドロの工場でも、タバケリア社はガブリエル氏自らが学んだフィリピンならではの伝統的な手法でのハンドメイドを続けている。
葉の収穫地についてお訪ねするとほとんどの葉の産地はチュバオ・バーレー(Tubao Valley)とラ・ユニオン、そして北ルソン(NorthernLuzon)の契約農園から取り寄せてフィラーやバインダーに使っているとのこと。
もちろん収穫された葉は、現地で2年間の熟成をさせた後にサン・ペドロの工場へ送られてくる。
工場ではラッパー、バインダー、フィラー用に分類されて、それぞれの部門で品質管理が行われ、さらに葉は分類されブレンドを決定してゆくという。
フィラーをバインダーで包み、それをラッパーで巻き上げる基本的な作業の後にそれぞれのシェイプごとに金型に入れられる。
完成したシガーは味を強くし、品質を維持するために熟成室に運ばれて保管される。
そして、そのシガーにラベルと包装をした後に、職人の手で作られた箱に詰められて出荷されてゆく。
フロール・デ・フィリピナスをはじめとしてタバケリア社のオリジナルブランドの多くは、スマトラ葉をラッパーに使用し、タバケリア社独自のサラ(Sarah)葉をバインダーに使用し、サラ葉とイサベラ(Isabela)葉をブレンドしたフィラーを使用し、スムースかつしっかりとした味わいに仕上げてゆくという。
マニラ産の葉巻を喫煙するとリラックスしているように感じるのはまろやかで全体のバランスがいいことからに他ならないだろう。
タバケリア社のフラッグシップブランドの1898は、国内だけでなく世界中からの注文も非常に多い隠れた名品と聞く。
個人の嗜好にもよるが寝起きにちょっと贅沢な葉巻をやるならマニラ産のタバケリア社のラインナップから選ぶとその日一日をさらにリッチな気分で過ごすことが出来るかもしれない。
立ち上がりから柑橘系の味わいがするアントニオ・ヒメネスをはじめとして日本市場向けに造られているエクスプローラーなどは女性でも気軽に楽しめるアロマシガーが揃っている。
しっかり時間をかけた食事の後の重厚なシガーもいいが、日常的に吸う葉巻には続けて吸っても飽きないフィリピンのタバケリア社のシガーの中から秀逸なものを選んでみるのも一考かもしれない。
これからもタバケリア社には頑張ってフィリピン伝統の味わいを続けて行ってほしいと思う。